秋〜冬


既に目の前には沢山の光があるのに、

徐々に胸の中の温度すら感じる事も出来ず、

なにか遮るような物があるように感じ始めた、


無、すらも苦であり瞑想をただ続けた、この状況での脳や身体の低酸素状態は、

更に自分が避けてきて沈殿した無意識が溢れ出してしまうからだ、

自分がこれまで受け入れてしまった闇と向き合う時間だ、

ただ広がる闇に、深呼吸で酸素を送り込む、唯一の光だった。


しかしこの状態そのものがループしてる事に気づいて、

いい天気だったので公園に出かけようと思った、

クロッキー帳と鉛筆をトートバッグに入れた

そのクロッキー帳は押入れを整理してた時に出てきた学生の時に使っていた物の残りだ、

螺旋状の針金は錆びて形状も変化している、

先端は鋭利で本から飛び出しており、指を切った、自分の血を舐めた、

自分が生命である事を思い出した。


ある公園、ベンチに座った、

木の枝から歩いてくる犬まで、取り敢えず無心でスケッチをした、

秋の温かい風と、木々の合間から放射状の光となって太陽光が降り注ぎ、

並木は揺れ、枯れ葉や種が空を舞っていた、

公園内で暖かさと冷たさが交差し、時たま上昇気流も発生した、

下に落ちていた葉や種はさらにかき混ぜられる、

子供の頃に海の中に潜っていた事が想起された、

そして私の着ていたニットにも木々の種がたくさん絡みついていた、

このままじっと座っていたら沢山の種を持ち帰ってしまうと思ったので、

移動しようと立ったら自分の靴から肩まで無数の虫が貼り付いている事に気づいた、

その中でも腕に貼り付いていたてんとう虫の幼虫が美しかった、

黒い胴体の中に数点、黄色い斑点のようなものがあった、

その個体に「ろばんび」と名前をつけた、

その個体がその名を気に入ってるかは不明だが。


本当に足元にも虫で沢山だった、

一歩でも歩いたら何匹殺してしまうんだろう、

このろばんびの親友をも殺してしまうのかもしれない、

そう思った瞬間に身動きが取れなくなった、

服に貼り付いた虫を取る事も、

少し力を入れすぎたら殺してしまうかもしれないからだ、

自分がただ動くだけで、何者かを殺めてしまう、

しかし歩かない限り、帰る事も、何かを食べる事も出来ない。

昨今の自分は菜食に移行はしているが、

それらが生産される過程でも虫は大量に死んでいる、


なるべく注意をはらい服についた虫をおとし、家に帰った、

その日からどうも自分の部屋の中でも移動する勇気が無くなっていった、

椅子から椅子への移動すらも厳しくなっていった、

物事の因果関係という事実で心の中を照らしていくほど、

逃げていく影を認識するようになった、

光を求めているのに、光を拒絶しているように感じた、

この何かを避けている自分に嫌気がさしてきて、

すべてのマインドブロックとなっているトラウマと決着をつけたいと思うようになった、

今思えばここが地獄への入り口だったと思う。



■冬


言葉もあまり発さなくなり外界との糸口も断っていった、

ただ毎日瞑想をして自分の問題を紐解こうとしていた、

またこのループに入ってしまってると自分でも気づいていたが、

どうしても自分の中で自分を邪魔する無意識を許せなくなっていった、

大抵のトラウマは幼少期に起きた事だが、

一つ一つ追体験をしていくうちに自分自身が持たなくなっていってる事も分かっていた、

でもそんな事ももうどうでもよくて、

たとえ明日死のうがすべてのトラウマを克服する事が大事だと思いこむようになった、

徐々にまたその闇に引きずり込まれてる事も自分でも気づいた、

気づいているのに自分ではどうしようもなくなってる事も分かっていた、

すべてが分かっているのに自分で自分をコントロールできなくなった、


徐々に過去の自分への憎しみも増えていき、

次第に自分に闇を与えた大人たちを再度内面化し、

それらを用い、幼少期の自分を痛めつける事をしていった、

こんな事をしていったら自分が分裂してしまう事も分かっていたと思う、

しかし簡単に屈してしまった事、逃げなかった事、諦めた事、

その過去の自分を許す事が出来なかった、

大人になった私は、子供の頃の自分をただ痛めつけている、

醜く最悪な縮図を俯瞰する自分もいた、

すべてが阿鼻叫喚、無だと思えた、

ジタバタする事で、波が発生する、

その波がまた返ってきて勝手に痛む、

一体何をやっているのだろう、

苦が自分自身という摩擦体にある事も分かった、

いつしか、この世界から自分が産まれなかったバージョンを妄想するようになった。

無が一番落ち着く、

しかし膨大な命の上で成り立ってしまった自分からまた逃れようとしてる事も分かった、

常に、現実を直視したくない感情が上に立つ、

一歩一歩、積み重ねる事への諦めもまた、幼少期の出来事から来ている、

「しょうがなかった」という言葉が、自分を分断した。



■年末


無駄な物を整理して捨てるようになった、

服も必要最低限な物だけを選び、後は手放した、

鞄だって一つあれば十分だ、

私はこれまで拾いすぎて来たのだと思う、

本も、映画も、ゲームも、十分過ぎる物を受け取った、

次から次へと新しい作品が展開されるが、

一つ一つ十分に、真剣に向き合えないのならば、

片手間で見るのは制作者に対しても失礼だと思い、

これ以上拾うのをやめて既に拾った物と真剣に向き合おうと思った、

味がしなくなるまで噛めば、また勝手に拾いたくなるはずだから。

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